小児肥満について Pediatric obesity

小児肥満の頻度

小児の肥満は年々増加し、30年前と比べると2-3倍に増加し各年齢の子供の5~12%に肥満を認めます。
また、男の子では11歳、女の子では12歳に肥満のピークを認めます。
北海道では他府県と比べて、肥満が多い傾向にあります。

小児肥満の原因

  • コンビニエンスストアーやファーストフード店などで、いつでも・どこでも手軽に食事を買うことができるようになった事。
  • 外遊びから室内でのゲーム中心の遊びへの変化、歩く機会の減少と車による移動の増加。
  • 食事のリズムの変化、などが考えられています。

小児肥満で困ること

一般的に肥満は無症状です。肥満が進行すると、大人の場合と同様に、糖尿病、高脂血症や高血圧を合併しやすくなります。さらに進行すると、動脈硬化がおこり心筋梗塞などがおこりやすい状態になります。

子どもに特徴的なのは、学習を含む日常生活の障害や外傷を受けやすいことです。具体的には、皮膚線条や股ずれ、肥満に伴う骨折や関節障害、月経異常、体育の授業などに著しく障害となる走行・跳躍能力の低下、肥満に起因する不登校やいじめ、なども大きな問題です。さらに困ったことに、小児期に肥満の子は、思春期・さらに成人の肥満へ移行する確率が高くなると言われています。

肥満の診断

“肥満度” で表します。
肥満度(%) = (実際に測定した体重 − 標準体重)/(標準体重)X100で表します。標準体重は年齢別、性別、身長別に既に日本人では算定されていて、この値から何%上回っているかを表します。

肥満度20%以上は小児肥満です。
  • 軽度肥満:20 ~ 30%
  • 中等度肥満:30~50%
  • 高度肥満:50%以上

肥満度曲線ダウンロード
【もみの木クラブ】

外来では

食事や運動の様子や生活リズムに関するお話を伺います。家族歴を伺うこともあります。診察では体重・身長・腹囲・血圧などを測定し、皮膚線条や皮膚の色なども診察します。小児肥満症の診断基準や小児肥満症診断スコアーをつけます。採血で、糖・脂質・尿酸・肝臓の機能などの検査をします。必要に応じて、糖尿病の検査や腹部CT・エコー検査も行う場合があります。

治療

“小児期の肥満を思春期までもちこさない” ことが将来のメタボリック症候群の発症を予防する事につながります。
そのためには、

1)生活リズムの改善︓

早寝早起き、3食をきちんと食べることが大切です。

2)食事療法︓

現在、何をどれだけ食べているか、また、おやつやジュース類の量についても把握しましょう。どの部分のメニューを改善したらよいかを毎月1回のペースで当院の管理栄養士と一緒に考え、毎日の食事メニューのアイデアを提案します(図1)。食事の基本は一汁三菜です。食事中は、良く噛んでゆっくり食べるように心がけ、“ながら食い” はやめましょう。家族みんなで一緒に楽しく食事をすることをおすすめします。

食事療法 ▲ 図1

子ども達が大好きなジュースには予想以上にお砂糖が使われています(図2)。例えばファンタには、5gのステックシュガー約12 本分の糖分が含まれています。ペットボトルのジュースを沢山飲むことはひかえて、その分お水やお茶で水分を補給しましょう。子どもの食事療法を行う上での注意点は、子どもは大人と違って年々成長していきますから、子どもの成長を妨げるような過激なダイエットはしてはいけません。また、一人だけ違うメニューの食事というよりも、家族全員の健康管理のため、バランスの良い食事をみんなで食べましょう。

朝ご飯の重要性︓子どもにとって朝ご飯を食べることが一番大切です。バランスのとれた朝ご飯をしっかり食べると、午前中の授業がしっかりと理解でき、成績が上がるという報告もあります。また、運動能力も向上し、根気よく物事にとりくめるようになると言われています。

ファンタ ▲ 図2

管理栄養士からのアドバイス

急増する肥満の子供達
今、子供をとりまく環境が大きく変化しています。食生活の欧米化、夜型の生活など、さまざまな原因があります。子供のダイエットは栄養バランスを考えて行わないと、とても危険です。
私と一緒に、食生活を見直しませんか?

3)運動療法︓

TVやゲームなどの室内遊びの時間を決めましょう。子ども一人での定期的な運動には限界がありますので、家族で一緒に運動をしましょう。水泳・体操・サッカー教室などを活用する方法もありますが、家でもラジオ体操・ストレッチ・腹筋背筋を鍛える・縄跳びなどの身近な運動を家族全員で毎日することも大切です。当院で長年、子供の運動を指導して頂いていたインストラクターが作成したDVDを配布して毎日の運動に追加して行って頂くこともあります。

4)薬物療法︓

糖尿病や高脂血症などの診断がついた場合は、年齢によってはお薬の内服治療を併用することがありますが、基本的には食事療法と運動療法で行っています。

身長や体重などの体格について、心配なことがありましたらご相談ください。
治療は長期戦ですから、子ども達にも治療の必要性についてお話ししますし、何より家族の協力が必要です。家族みんなで、明るく前向きに生活習慣病を改善しましょう。